自分を変える一般的手順(1)
最近、あることを思いついた。
それは、私たちが、環境の変化に対応しつつ、自分の力で自分を変え自分の希望をかなえるための一般的手順とも言える。
大きく二つのステップからなる。
(2つのステップ)
● 一つ目は、「認識・行動手順の再構成」ステップ
日常において長い年月に自動化した考え方や行動パターンをいったん留保して、もう一度、現実状況と自らの希望を反省し、新しく必要となる現実認識と行動方針を自らの言葉で新しく再構成し意識化し設計することである。主役は、言語であり、思考である。
●もう一つは、「認識・行動手順の自動化実装」ステップ
逆に、先のステップで新たに意識化された行動方針や、あるいは何か身につけたい技能を繰り返しトレーニングすることによって身体の自動システムに落とし込むことである。英語で言うpracticeの段階。こちらの主役は、身体である。
(行動レベルの2つのあり方)
この二つのステップは、私たちの頭の回路と身体行動について二つのレベル、言語を中心とした意識レベルと、身体化した潜在意識レベルが区別できることを前提にしている。
言語を中心とした意識レベルは、行動手順をいわゆる頭で理解している段階。まだ、身体化してないしていない段階。この場合にこうしてあうして、という風に考えながら行う段階。当然、とっさの行動はできないし、進みも時間がかかる。例えば、車の運転を自分ではじめて行う時の状態。英会話の本を読んで理解はしても、実戦ではさっぱり口に出てこない時の状態など。
一方、身体化した潜在意識レベルというのは、車の運転で言えば、止まろうと思った瞬間にすでにどちらの足ともなくブレーキを踏んでいる時や、あるいは英会話であることを話そうと頭に浮かべるだけで英語が口をついて出てくる状態を思い浮かべることができる。いちいち、意識したこうしてあうしてというステップはここにはない。当然早い。
(身体化した潜在意識レベルの特徴)
私たちは、長い経験の期間を通して、身についた考えや感情、行動パターンというものを持っている。それは長い年月の間に身体に実装され自動化されている。
それらは次のような特徴がある。
1)自動化されているために、外部からの動きに対して条件反射的に瞬時に対応する。
2)身体化されているために、意識を通して後で思い起こそうとしても記憶に残っていないことも多い。
3)だから、それを途中で抑制・停止することは困難である。
つまり、それらの身体化された行動手順は一つのモジュールとして自動化されている。それは、意識を通らないという意味で潜在的である、とここでは表現している。
(2つの状態間を移行する2つのステップ)
上のステップは、ともに、潜在的状態と意識的な状態との変換・移動の流れとなっており、それらは互いに、逆の流れになっている。つまり「認識・行動手順の再構成」ステップは、潜在的状態から意識的な状態への流れで、「認識・行動手順の自動化実装」ステップは、意識的な状態から潜在的身体的な状態への流れと言える。
そして、一つの状態からもう一つの状態に移行するには、努力が必要だ。
潜在的な状態から意識的な状態に移行するには、語彙力と思考力によるある種の精神的努力が必要だ。そこでは言葉が重要な役割を担っていると思われる。
意識的な状態から潜在的な状態への移行には、一定期間にわたる繰り返しの身体的トレーニングが必要。
二つの状態間の移動は、意識的な努力が必要で、自然状態では移行できない。
一方、私たちは、個人的努力なしでも、生まれつき一定の潜在的行動様式を獲得している。本能や感情などのことだ。これらは、個人的な努力なしで自然状態で持っており、かつその発揮も努力不要で瞬発的に行われる。
とは言え、これとて、私たちの祖先が、長い環境とのつきあいの中での努力の結果として、身体に自動化実装されてきたものとも言えるかもしれない。
いずれにしても、私たちは、自分で必要に応じて努力して身につけ技能や、先天的に長い年月をかけて実装された行動様式のお蔭で、日々の外界の変化に対して即応的に対応することができるわけだ。
(自動化実装機能が環境に適応しなくなった時)
しかし、課題もある。
もし、私たちをめぐる環境が大きく変化して、獲得してきた潜在的な自動化システムでは対応できない、あるいはかえってわが身の状況を危うくする。そんな環境の変化があったとする。
その時には、私たちは、再度、新しい行動手順を設計し直さなければならない。あるいは少なくとも、従来獲得していた自動化システムの条件反射的な起動を抑える必要があることになる。
ここに、第一のステップの必要性が生じることになるが、これは次回にしよう。