笑顔を忘れない
最近、海外ドラマ「ナンバーズ」を見る機会があった。
このドラマ、FBI職員(ドン)が遭遇する数々の事件の解決を、その弟で優秀な数学者(チャーリー)が、数学理論とコンピュータを使って助けるという話。
毎回違う数学理論が登場する面白さが見どころだが、それとは別に、父親や同僚が絡んだ味のある人間ドラマとしても楽しめる。
その最後の収録DVDには、このドラマにかかわった映画俳優・スタッフの終了打ち上げパーティの様子が納められていた。
このパーティで、ドラマの出演者やスタッフが一人一人簡単に挨拶をするのだが、その中で、チャーリーの兄のドン役を演じた俳優さんが、おおよそこんなことを言った。
「(これで、みんなとはお別れになるけれど)みんながくれた笑顔は忘れない、その笑顔に感謝したい・・・」
このフレーズ、こんな機会があったら私も真似したい、と思わず考えてしまった。
人の笑顔の魅力、人の表情ということに関心を持つようになったのは最近だ。
TVやネットなどで人の顔の表情を見ていて、ひょっとしたらと思いはじめた。
思い起こしてみると、魅力的に思えた人、好ましいと思えた人は、だいたい、笑顔や柔和な顔で思い出される。
人の表情、笑顔や怒り顔は、明らかに見る人に一定の感情を引き起こす。
笑顔がどうして好ましく思えるのかわからないが、笑顔にはそういう力が確かにある。
私自身がその効果を感じている。
一方で、私自身は、緊張したり、考え事があると、すぐに眉間に「しわ」がよって難しい顔になっているらしい。その険しい表情は、見る人に一定の緊張感を与え、そういう形で場の空気を形作ってしまうこともある。
そういう顔を、真剣な顔として好ましく思ってくれる人も中にはいるかもしれない。しかし、自分では人の笑顔が好きなくせに、他人に険しい顔ばかりしているのは、不公平だから、眉間の部分が緊張して「しわ」がよらないように、お釈迦様の額のほくろのようにそこに何か印でも貼り付けておこうか、と考えたりする。
そんな事を思っていた時に、上のパーティの場面を見たので、笑顔の意味が急に大きく感じられた。
笑顔の意味は大きい。笑顔は、受け取るだけでなく、人にも与えるようにならなければ、と思う。
このパーティでの挨拶では、劇中の役で積極的な印象を持っていた女優が、「私は、こういう風にみんなの前で話すのは苦手なの」と言って、短い挨拶をして恥かしそうにもとの席に戻ったのも印象的だった。
シャイな表情もけっこう好きなのかもしれない。
海外ドラマのお蔭で、あらためて、笑顔とシャイに思いをはせることができた。